ジュートの歴史

ジュートの歴史と産地

 

ジュートは、数千年前から人々の暮らしを支えてきた天然繊維です。
古代インド、ガンジス川流域の豊かな水辺で育つこの植物は、早くからロープや網、布として使われてきました。
紀元前から漁業や農業を支え、村ごとに織物が作られていた記録も残っています。

 

時代が進み、16世紀~18世紀のムガル帝国時代には、ジュート布は地域の市場で広く取引され、生活に欠かせない素材となっていました。
19世紀に入ると、イギリスの産業革命の波に乗り、ジュートは世界へと輸出されます。スコットランドの港町ダンディーで紡績技術が確立され、「ジュート産業」が急成長しました。インドのカルカッタ(現在のコルカタ)周辺には大規模な工場が次々と建てられ、世界中に麻袋やロープが送り出されました。
この時代、ジュートは「黄金の糸」とも呼ばれ、産業と貿易の象徴になったのです。

 ◎産地

ジュートは、温暖で湿度が高く、豊富な水資源がある地域に適しています。
現在の主な生産地は次の通りです。

 

  • バングラデシュ
    世界最大のジュート生産国。豊富な雨量と肥沃なデルタ地帯がジュート栽培に最適で、世界シェアの約6~7割を占めます。

  • インド
    西ベンガル州、アッサム州、ビハール州などで広く栽培され、バングラデシュに次ぐ生産量を誇ります。カルカッタは歴史的なジュート貿易の中心地として知られています。

  • その他の地域
    中国、ミャンマー、タイなどでも一部栽培されていますが、規模は小さめです。

◎ジュートが繊維になるまで~

1:栽培・収穫

  • ジュートは3~4か月で高さ3m以上に育ちます。
  • 茎がまだ柔らかく、繊維が強くて長い時期(開花前)に刈り取ります。

2:茎を水に浸す(レッティング:浸漬・発酵)

 

  • 収穫した茎を束ねて、川や池などに2~3週間ほど沈めます。

  • この間、微生物(主に細菌や水中の酵素)が働いて、繊維を包んでいるペクチン質やガム質を分解します。

  • 茎の表皮と木質部分の間がゆるんで、繊維が剥がしやすくなります。

3:繊維をはぎ取る(ストリッピング)

洗浄

  • はぎ取った繊維を川の水などでよく洗い、残った樹脂や汚れを落とします。

 

乾燥

  • 洗った繊維を太陽光で乾燥させます。

  • 均一に広げて、数日間かけてしっかり乾燥させます。

4:選別・梱包

 

  • 繊維の品質(長さ・色・艶)ごとに選別し、束にして出荷します。